[ 小ねた ]

血塗れになって雪の上に倒れ伏した俺を、照が抱え起こしてくれた。
・・・こんな時でも、照の腕は限りなく優しい。
まだ終わらない。
まだ尽きない。
こんなにも俺を奮い立たせる、照が居るのだから。
泣き出しそうな照にゆっくりと笑みを返して、全力で身体に治癒を働きかける。
心臓のすぐ脇に食い込んだ『事代主(コトシロヌシ)』の言霊が、俺の力を悉く侵し、奪い、掻き散らしてゆく。
それでも俺は、『妖』の血を滾らせ、『経津主(フツヌシ)』の御霊を励起させる。
会長め、えげつねぇ真似しやがる。・・・絶対負けら・・・れねぇ・・・。

あっという間に色を失って行く視界の中で、見慣れた人たちが、見知らぬ顔で俺たちを取り囲む。
瞳に沈痛の色を浮かべながらも、その手に宿る明確な殺意がそれを裏切っている。
照が、威並ぶ神人たちをきっと睨みつけた。

手にはシャープペンと、『神語の書』。

頁を開いてなにやら書き付ける。
変化は一瞬。
俺の身体の傷が残らず消えた。まるで何事も無かったかのように。
神人たちの間に動揺が走る。
それを成したらしい照も目を丸くして俺を見て、そして頬にふっと、喜色を浮かべる。
再度『神語の書』に向かう照。

なにを書いてるんだ・・・?

 「照を止める」
>『好きなようにさせる』

なにを書いてるんだ・・・?
俺は照の手元を覗き込んで、そして自分が選択を誤ったことを知った。

愁 「49日目・・・晴れ、ときどき・・・・っ?!」
光 「あ、天上さん・・・っ!」
巴 「天上君・・・なんてことを・・・っ!」

照 「ごめんなさい・・・日記帳みたいだから、つい」

晴れ間の雲から、ぶー ぶー ぶひ と声がする。
世界の果てから、『検 閲 削 除』の四文字が進軍してくる。
降りしきるピンクのぶたの中、真っ白になった俺たちは、世界の終わる音を聞いていた。

おしまえ

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くだらなくてごめんなさいw
『書』って、あれに似てません?
ただそれだけの話。
照ならやってくれそうです。