月額480円〜の高速レンタルサーバー ColorfulBox

しとしとと、雨音が夜気を侵して染み込んでくる。
台所に立ってプレートを洗う音が、それに答えて、葛城宅を包んでいた。


きっかけは何だったか。
テレビに映った老婦人が、クイズに挑戦する際に漏らした、ささやかな望みだったか。

「600万…そんなにするんですか」
「んー、でも結構いいトコみたいだから。高望みしなければ、350万とかで済むんでしょうけど」
「それでもですか…凄いんですね」
「ま、坪単価が一番高い商売でしょうねー、多分」

「それくらいの余裕がなきゃ、とってもじゃないけど、やってけないってコトなんでしょうねー」
視線をテレビから外さず、ホットチリ味のポテトチップスをパク付くミサト。
海峡の向こう側のことのような物言いに、つい苦笑する。
「まるっきり他人事ですね、なんか」
「んー…。ああいうのってさ、誰かの為にするもんじゃない?」
「…そうかも…しれませんね」
「結局、目に見えてないと、不安になるのよね。誰もがさ」
かたん かたん
食器を下げる音だけが、しばし相槌を打つ。

「ミサトさんは…要らないんですか?」
「シンジ君は欲しい?」

かたん かたん   ごと

「僕は、欲しいと思います」
「…そっか」

「じゃ、私も買っとこうかなー、お墓」
うんっと伸びをして、初めて振り返る。
「シンジ君も、一緒に入る?」


何で赤面しちゃったんだろう。
珍妙なくすぐったさが、水の音に紛れて、溶けた。



-・-

2002年06月15日
doodle

△インデックスに戻る

アクセス解析