人の体は普通、日の出とともに目覚め、日没につれて眠くなるよう出来ている。
蒼銀の髪持つ彼女など、それを地で行く生活だ。
そんな素朴な彼女でも、時折眠れぬ夜がある。

どこにも用のない日には、彼女は日がな、本を読む。
学校でぱらり、公園でぱらり、自宅でぱらりと、めくった頃には夜になる。
さてでは寝ようと横になると、なにやら体が落ち着かない。
折りしも夜風は涼しくて、頭の霧も、晴れてくる。

体の異常は筋肉の疲労、及びそれに伴う血行不順。解決法は…ストレッチ。
伸びる、ちぢむ、丸くなる。
それで眠れりゃ占めたもの。ところがどっこい、
うっかり物思いにふけろうものなら、冴える頭も調子よく、いつの間にやら、朝がくる。

日ごろの訓練の賜物か、それでも日常の務めに支障はない。
元より寡黙な彼女のことだ。多少の変調、そうそう誰にも気付かれない。
しかし、流石は同僚だ。
「綾波、今日は調子悪いの?」「いいえ…夕べ寝てないだけ…」

はてさて、地下へと進む、モノレール。
役得だったのは、朝の早い少年だったか、夜の遅い少女だったか。

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2002年06月09日
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