猿との遭遇

何かの尻尾を掴んでしまう碇シンジ

創作設定

サードインパクトは起こった。人類は一体の使徒として束ねられ、ただ2人だけが留まった。
赤い世界からの帰還者は未だ無く、時の砂は流れ続ける。
まどろむ巨大なものの傍らで彼らは生き延び、世界は緑に覆われていった。

頭上を樹木が覆い、葉をすり抜けた緑の光を落とす。
足元を多様な苔が包み、しっとりと濡れて押し返す。
「見たこともない森になってる…変だなぁ」
木々の根の間からかろうじて覗く標識や建物の名残が、そこが人の住む土地であったことを窺わせる。
かつて第三新東京と呼ばれた町へ続く道は、セミの声ひとつ無く少年を迎えた。

ポプラ、イチョウ、プラタナス。ブナ、ミズナラ、ヒメザクラ。アカシア、オリーブ、ブーゲンビリア。
気温とか、環境とかを一切無視して出鱈目に生えた木々は、やはり出鱈目な巨木へと成長している。
それぞれの樹皮を苔や蔦が這いまわり、垂れ下がる。 そして 静かだ。

見慣れないこの蔦と苔たちが、音を吸い込んでいるのだろうか。

ふと目に付いた一本を掴んでみる。   むにゅ。

「むにゅ?」

柔らかい。引っぱってみる。ぐいっ
赤く、うねうねした長い物体。どこをとっても同じ太さで、細かな毛に覆われている。
しげしげと眺めていると、突如引っぱり返された。ぐいっ ?

「ちょっとあんた、ひとの尻尾掴むんじゃないわよ!」

赤いラインを辿って目線を上げると、そこに一匹の猿が居た。
猿……のはずだ。
可愛らしい、ぬいぐるみの猿がこちらを睨みつけていた。

−・−

もはやエヴァじゃない?

2003年 3月 16日 doodle@Libra Library

・「Illust」に戻る ・「doodleの棚」に戻る

『新世紀エヴァンゲリオン』は、(株)GAINAXの作品です