鵺姫異聞
エンカウント
待ちに待っていた…しかし地元の本屋で一切見かけることなく、発売から10日ほどしてから遠方で発見。…ともあれ、時間を超えた旅の物語、『鵺姫真話』の姉妹編。異聞刊行。勿論、即買い。
シリーズで断片的に語られた裏舞台を総ざらいにする勢いのこの作品。時間物語ファンと星虫ファンは、読むべし。
あらまし
時は戦国時代の真っ只中。宿場町の大部屋で、一人の男が講談を披露している。名調子で語られるのは、3年前に高牧(たかまき)の地で起きた「鵺姫」の怪異。その話に大きく関心を寄せる、珍妙な身なりの若者がいた。
田中隆は、つい先日まで宇宙港都市の警備部に所属していた。…いや、今でも所属しているのだが、仕事どころではなくなってしまった。氷室友美のクラスメイトでもあった彼は、時間を遡り、宇宙の命運さえ賭けた事件に、すっかり巻き込まれていたのだ。
感想
時代が大きく前後する展開は『真話』で経験済み。とはいえ、かつての三作の舞台をぐるぐると…目が回ってしまいました。
奇想天外な裏舞台に、膝を打つこと請け合い。読み味の軽い、タイムスリップ冒険小説。
「おっとこのこ」の話だな、と。
酒宴、海賊と意気投合、タイムリミット付きの救出劇を越えて、子々孫々異類の血を伝える。
旅する隆に、『剣客商売』の秋山大治郎を重ねてしまったのは私だけですか?
今回は初めから大掛かりな仕掛けを前提にした物語ですが、それに比して半ばの盛り上がりに乏しかった感じがして欲求不満。主人公より共演者が大きすぎたせいか、あるいは未来から遡行してきた「女神」と「戦士」という怪奇さが、のんびりムードに食われてしまったせいか。
主人公一個人の視点から物語にシンクロできるのが特徴の岩本作品。
にぶちんの主人公、隆の意識が小説に反映されているようで、後から妙に納得してしまったり。
ともあれ、隆のスマイルと、さやの笑顔で二重マル。
良いラストシーンでした。
作品ごとに作風が変わってゆく感じがして、次の作品が早くも楽しみだったりします。
いろいろな意味での「鬼子」が歴史を担う辺りは、「イーシャの船」と共通した要素ですね。
それにしても、直系の血縁かどうかは分かりませんが、かなりの高確率で御先祖様が同級生とは…。
なんて話を作りますか、岩本氏は。 おみそれしました。