ミドリノツキ
「意地」と聞いてどんな印象を持ちますか?古くて厄介?格好良い?これは意地に命を張れる少年の物語。
エンカウント
『星虫』ですっかり岩本作品に嵌まったタイミングで出会った、3冊綴りの長編。
感想
特徴的で一途な主人公の気骨、魅力的な生活描写、二転三転する目まぐるしい展開と、三拍子揃って現在のこれまでの岩本作品の集大成ともいえそうな作品。
「世界的な影響を与える事件の中で、一人の少年に出来る最大限のこと」をきっちり描いてくれているところが一番の好感点。『星虫』で強く出ていたこの特徴が、今回は一層はっきりしていて楽しませてくれる。
『イーシャの船』のように様々な立場の人々が出てきますが、それぞれに見せ場が用意されていて、とても丁寧な印象。この人は、この位の長い尺の物語を書くのが向いているのかも。大団円で事態が終息し、賑やかな(それでいて波瀾を予感させる)日常へ帰っていくラストシーンは結構お気に入りです。
反面、状況が出来すぎていて「お釈迦様の手の平」的な印象が拭い切れない。何も語り残さない作者のサービス精神とも言えるし、この辺は読み手の好みの問題になるでしょう。残念というか、欲求不満というか。カタルシスが持続しない(笑)
日常をひっくり返すガジェットも大掛かりで、かつ盛り沢山。その一方で、飽くまでも身一つと手の届く限りのもので挑む主人公は、なかなかに爽快です。ガッツのある少年の物語。ピンときた方はどうぞ手に取ってみて下さい。