星虫
自分の決めた目標に対して、不安や迷いを感じたことはありますか。これはそうした岐路にいる彼らに、「降りかかった」物語。
エンカウント
まず目を引いたのが、鈴木雅久氏が描く表紙。
ぱらぱらとめくるにつれ、かつての宇宙好きの血が騒いで手が離せなくなり、結局店頭で立ち読みの上、購入後に再読した久々の大ヒット作。
岩本隆雄氏による、SFジュヴナイル小説。
新潮社から出版され、10年後に朝日ソノラマからだされた修正版を手に取りました。
『星虫』のあらまし
舞台は多分、今とそう変わらない日本のとある町。高校1年生になった氷室友美は、クラスで一番の優等生の顔と、スペースシャトルの操縦士になるという夢を持ったお転婆の顔の、ふたつの間で揺れていた。
ある日、世界中に現れた謎の物体『星虫』に世間は騒然となる。
感想
10年前に読んでみたかった。(笑)
成長する星虫と、命に対して独特の観念を持つ友美の関わりが、緊張感を醸していて大ヒットです。
「空から飛来した謎の物体!」というSF最高のフレーズからはじまって、
夢の実現へ踏み込む主人公という少年期物語の王道をたどってゆく。
ふたつの領域の魅力が鮮やかに、過不足なく盛り込まれています。
…お終いには、笑みを通り越して、転がってしまうような『王道』もあって、「ザ・"青春アドベンチャー"」といった趣き。
次第に発揮される星虫の能力など、光景を想像するのが、とても楽しい作品です。
読みやすく、読後の感触が極めて爽快。楽しみやすい作品に食指が向いている方には、特にお勧めします。
王道的な『お約束』は散見されますが、機会の一回性、犠牲などもきちんと言及されており、ファンタジックなライノベには飽きたという方も、一度手に取ってみて下さい。